楽曲タイトル

秘儀 I -管楽合奏のための-

作曲

西村朗

楽器編成

2 Fl.
2 B♭Cl.
A.Sax.
T.Sax.
2 B♭Trp.
2 Hrn.
2 Trb.
Euph.
Tub.
2 Timp.(6 Rin, Tamb.)

Perc.
B.D.
Steel Drum
2 Sus.Cymb.
Sizzle Cymbal
Antique Cymbal
T-tam(with Super Ball)
Marimba
Sleigh Bell

曲目解説

この曲のタイトルにいう「秘儀」は宗教的な架空の儀式を意味している。それは秘教的な性格を持つもので、シャーマニズムに属する類のものである。「秘儀」はシャーマン (巫女) の舞踊を中心にして展開される。その舞踊は旋回舞踊であり、舞踊者は旋回しつつ忘我 (トランス状態) に達し、招魂・招霊・降神の媒体となるに至る。 この曲はそうしたシャーマンの秘密の舞踊儀式のための舞曲である。後半の8分の9拍子や6拍子は、舞踊が旋回性のものであることと関係している。曲中には速いテンポの点描音群ホケトゥスやヘテロフォニーといった語法の展開がみられ、東アジアや東南アジアの伝統的な宗教音楽 (儀式) の一部からの影響もみられる。 曲は以下の6つの部分により構成されている。 1)冒頭から第31小節までは儀式の開始を告げる前奏部。 2)第32小節からは序の舞曲。木管楽器群に16分音符のスタッカートの波動。アクセント位置のずれによる点描。金管楽器群はケチャに基づくホケトゥスを奏する。 3)第64小節からは遅い舞曲。木管楽器群がエロティックな旋律のヘテロフォニックな絡みを官能的に奏する。 4)第97小節からは8分の9拍子による第1の旋回舞曲。 5)第113小節からは8分の6拍子による第2の旋回舞曲。 6)第184小節からは終結部。旋回舞踊の興奮恍惚のきわみに至り、舞踊者 (シャーマン) はトランス状態で失神する。

作曲家プロフィール

西村朗 西村朗
大阪市に生まれる。東京芸術大学及び同大学院に学ぶ。 西洋の現代作曲技法を学ぶ一方で、在学中よりアジアの伝統音楽、宗教、美学、宇宙観等に強い関心を抱き、そこから導いたヘテロフォニーなどのコンセプトにより、今日まで多数の作品を発表。 日本音楽コンクール作曲部門第1位(1974)、エリザベート国際音楽コンクール作曲部門大賞(1977・ブリュッセル)、ルイジ・ダルッラピッコラ作曲賞(1977・ミラノ)、尾高賞(1988・1992・1993)、中島健蔵音楽賞(1990)、京都音楽賞[実践部門賞](1991)、日本現代芸術振興賞(1994)、エクソンモービル音楽賞(2001)、第3回別宮賞(2002)、第36回(2004年度)サントリー音楽賞、第47回毎日芸術賞(2005)等を受賞。この他に、02年度芸術祭大賞に「アルディッティSQプレイズ西村朗『西村朗作品集5』」が、05年度芸術祭優秀賞に「メタモルフォーシス・西村朗室内交響曲」が選ばれる。  1993~94年、オーケストラ・アンサンブル金沢コンポーザー・イン・レジデンンス。1994~97年、東京交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。2000年よりいずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督を務める他、2007年東京オペラシティ「コンポジアム2007」のテーマ作曲家となり、ピアノ、室内楽、管弦楽作品が演奏され話題となる。  近年、海外においては、ウルティマ現代音楽祭(オスロ)、「ノルマンディの10月」音楽祭(ルーアン)、アルディッティ弦楽四重奏団、クロノス・カルテット、ELISION、ハノーヴァー現代音楽協会等から新作の委嘱を受ける他、ウィーン・モデルン音楽祭、「ワルシャワの秋」現代音楽祭、MUSICA・ストラスブール音楽祭、ブリスベイン音楽祭等において作品が演奏されている。 現在、東京音楽大学教授、(社)日本作曲家協議会理事。

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